辻堂でホットスポットパトロール研修会開催

 地域で防犯パトロールをする際に、どのような場所を重点的にチェックしていますか?地域によっては、適宜コースを決めてランダムにパトロールを実施されているという活動もあるかもしれません。

 そのようなやり方に対し、「ホットスポットパトロール」という方法があるのをご存じでしょうか。ここでいう“ホットスポット”とは、犯罪が起きやすいとされる場所を指し、そのような特徴をもつ場所を重点的に見回ったり、その場所に一定時間留まって犯罪の発生を抑制する方法が「ホットスポットパトロール」です。

 辻堂地区で、2017年11月17日に立正大学の小宮信夫教授を講師に招いたホットスポットパトロール研修会が実施されました。

 研修前半の講義では、講師から「犯罪者は場所を選んで実行する」という犯罪機会論に基づき、諸外国などでは、防犯パトロールといえばホットスポットパトロールが主流になってきているといった事例紹介がありました。

 具体的には、「入りやすい場所」「見えにくい場所」が、犯罪が起きやすい場所とされています。講義の後は、実際にどのような場所が「ホットスポット」になるのか、講師と参加者でまち歩きを実施しました。

 写真のように、新旧混ざった家が建ち、統一されていない建物が並ぶ路地は、周囲から視界を完全に遮断してしまうことがないので良いとのお話がありました。また、塀などに落書きをされた場合はすぐに消すということが、管理や意識が行き届いているまちであるとの印象を生むため、犯罪者を遠ざけるとの説明がありました。

 空き地や公園等では、外周に柵があるかないか、入口が限られているかどうかといった点がチェックのポイントとなりました。出入り口が限られている場合は、入りにくく、逃げにくいため、犯罪者の視点からは犯罪を実行しにくい場所と判断されます。

 また、公園では、低学年が遊ぶエリアと合わせて、高学年の子どもたちや大人が遊ぶスペースを併設しておくことで、年長者が小さな子どもたちへの視線を確保するという工夫もあるそうです。

 庭先に植木鉢やプランターなどがあったり、花を植えていたりする場所では、その世話や水やりのために定期的に人が出入りするため、犯罪者は好まないとのお話がありました。

 一方で、辻堂南部エリアに比較的多い駐車場は、場所によってはホットスポットとなる可能性があります。犯罪を企画する人は、車で移動し広い駐車場に車を止め、そこから狙いやすい家や人を物色する、いわゆる“作戦会議”をすることが多いそうです。駐車場に長時間停車していても怪しいと見られることがなく、駐車可能台数の多い場所は、犯罪者にとってより好都合となります。

 また、「入りやすい」駐車場は、車上荒らしも起きやすくなると言われています。駐車場の入り口に、ロープやチェーンなどがかかっているだけで、入場に手間がかかり、犯罪車両や犯罪者を招き入れない効果があるそうです。

 講師の指摘によれば、駐車場の数字が消えかけていたり、駐車主名を書いた表示がついていないものは、間違えて停めてしまったと弁解しやすいため、犯罪企画者に悪用されやすいとのことです。

 続いて、「見えにくい」場所の例として、写真のようなビルの外階段が挙げられました。

 入居者以外も出入りできる外階段は、特に、道路や周辺からの視界が遮られ、座り込んでしまえば大人でも子どもでも存在を気づかれないため「入りやすく見えにくい場所」になるとのことです。

 次に訪れた辻堂海岸地区の学校が並ぶ一帯では、敷地と敷地の間を通る歩行者用の通路について、参加者から「夜間は暗くて危ない」といった指摘がありました。数十メートルおきに街路灯があり、かつてよりは明るくなったものの、民家が隣接しておらず人通りがなくなるため、周囲から人の目が行き届かず、非常に危険な場所であるとの解説がありました。講師によると、犯罪抑止のために、このような場所は街路灯を整備して通行を支援するよりも、別の道の利用を促すことも方策として考える必要があるとのことでした。

 同地区の浜見小学校では、藤沢市内の小・中・特別支援学校と同様に、校門から来校者用玄関までを案内するラインが地面に引かれています。

 このラインで、玄関までのルートを明確にしていることは、利便性の向上だけではなく、犯罪抑止のために効果的であるとの説明がありました。

 外部からの進入者がこのラインを外れて校内を歩き回ろうとした場合、子どもであっても正規の訪問者でないことがすぐにわかり、避ける必要があると判断できる材料となるのだそうです。

 こちらは、夕方まで、たくさんの子どもたちが遊んでいた公園ですが、ここでもホットスポットの1要素である周囲から「見えにくい」との指摘がありました。隣接した団地の建物の側面が公園に面しているため、大きな壁のようになってしまっているとのことです。建物の向きが90度回転した配置関係であれば、住人の目線が公園に注がれ、自然と目が届く場となります。

 このように、まち歩きを通じ「入りやすく、見えにくい」場所を、ホットスポットとして地域で共有し、重点的にパトロールを行ったりパトロール中一定時間その場所に留まったりすることで、効果的かつ効率的な犯罪抑止を図ることができるといいですね。